採用の新しいかたち、「副業採用」で会社も社員も成長する

優秀人材の「少しだけ」を採用する

_優秀な人材を会社に入れるにはどうしたらいいのか?

_優秀な人材が辞めてしまわないようにするにはどうしたらいいのか?

 

近頃、企業人事の抱える最も普遍的なこれらの問いに対し、新たな仮説が生まれている。

 

_既に他社で活躍している優秀な人材に「少しだけ」手伝ってもらえないか?

 

そう、「副業採用」といわれるものだ。

これまで優秀人材の採用といえば、会社の求める人材像に限りなく近い人の100%、120%を会社にフルコミットしてもらうということを前提として行われていた。会社の人事制度や育成システムなど、この前提に基づいて作られている。これに対して最近いくつかの会社が実験的に始めた副業採用とは、100%でなくとも、30%でも10%でも、既に活躍している優秀な人材の「少しだけ」を採用してみるのはどうかという新しい提案だ。

 

副業採用をはじめた会社

 

IT系の比較的新しい会社が、2017年に入りこの取り組みを始めている。1月17日には株式会社サイボウズが「複業採用」としてソフトウエアの開発や運用、品質保証などに携わる「エンジニア職」のほか、製品の販売促進などに関わる「ビジネス職」の募集を始めた。勤務時間や報酬、休日などの待遇面は一人ひとりの働き方や契約形態の希望に合わせて決めるそうだ。「複業」としたのには、仕事に主ー副の優先度をつけるというよりは、異なる仕事を複数もつのが当たり前になる未来の社会を先読みしてのことだという。

 

また、1月31日には株式会社サイバーエージェントの連結子会社で広告メディア事業を展開する「株式会社サイバー・バズ」が「助っ人採用」として、ビジネス職やエンジニア職だけでなく本社機能まで全職種において副業として当社業務に携わる人を募集開始した。既に活躍している、経験豊富な人材を即戦力として活かすだけでなく、多様な人材が社内で働くことで新たなカルチャーの醸成やイノベーションを起こすこともねらいのひとつだそうだ。

 

政府にも、大企業でも推奨されつつある副業制度

 

上記二者の取り組みは、2017年に始まった斬新な取り組みとして日経新聞やその他多くのメディアにとりあげられているが、そもそも、「副業・複業」という働き方については2016年後半から政府や一部の大手企業を中心に推奨されつつある。

 

2016年8月3日、第3次安倍再改造内閣にて働き方改革の担当相が新設されてから、安倍晋三首相は『働き方改革』とGDP(国内総生産)600兆円達成への強い意気込みを会見で語った。さらにその約半年前、同年2月24日の時点でロート製薬株式会社が、国内1500人の社員に対し他社やNPO(非営利組織)などで働くことを認める副業精度を導入している。3.11の東北震災復興支援に参加した際に、会社で働きながらボランティアを行う人々に触れたことをきっかけに、会社の在り方や社員の働き方について社内でディスカッションを行い、CI(コーポレートアイデンティティー)やロゴを新しくするのと同時に「社外チャレンジワーク制度」(副業)と「社内ダブルジョブ制度」(複数の部門・部署を担当できる制度)を打ち出した。

 

副業採用のもたらすもの

ー「NPO法人二枚目の名刺」のスタッフに聞いてみたー

「社会人が本業以外に2枚目の名刺を持って、組織の枠を越えて新しい社会を創る活動を実践する」ことを目指す「NPO法人二枚目の名刺」が行った大企業の人事担当者向けアンケートでは、副業を行う自社社員がプラスの影響を持ち込んでいることを実感しているという結果が出ています。

■副業・兼業を行っている自社社員について、どのようなプラスの影響を持ち込んでいると感じていますか?

1位  会社外の多様な視点を持ち込んでいる  54%

2位  個人のスキルが高まった           36%

3位  視野が広がり大局観を持つようになった  32%

4位  新しいことへの挑戦をしてくれる       24%

5位  社外ネットワークを持ち込んでくれる     23%

(「副業・兼業に関するアンケート調査(大企業・人事編)<今後、調査結果を公表した段階でURLをここに>」 NPO法人二枚目の名刺調べ(2017年2月)※インターネット調査により、1,000人以上の従業員を持つ企業の人事担当者368人が回答)

<スタッフさんよりコメント>

会社組織の枠を超え、もう1枚の名刺を持つくらい本気で社外での活動に取組むことを推奨する企業は、そのことによる新たな社員の変化に注目しています。普段の仕事の延長では実現できない、社外に踏み出すからこそ生まれる、越境学習の効果です。多様なバックグラウンドを持つ社外メンバーとの取組みは、会社の常識や仕事の進め方の違いを知り、他のスキルを学び、今までの自分のやり方を見直す機会です。また、会社外の視点を持込むことや、部門、会社という枠に縛られない広い視野を持つようになることが、会社にとってプラスという見方もあります。

 

***

 

このように、副業制度、副業採用を進めることの効果は、決して、単に国の労働力やGDP向上、会社の優秀人材不足への対処に留まらない。ひとつの仕事や職種に留まらず異なる環境で異なる経験を積むことによる社員ひとりひとりの視野の広がりや考え方の多様性や成熟度の高まりが既にみられているという。

 

優秀人材の100%を会社で囲い込み、外へ逃げないようにするのではなく、積極的に外を見させ多様な経験をさせることで、結果的に時間は減っても会社でのクリエイティビティをより発揮するようになり、さらには人生の充実感を満たしながら常に良いコンディションで長く働いてくれることに繋がる。

 

最初の質問に戻るが、

_優秀な人材を会社に入れるにはどうしたらいいのか?

_優秀な人材が辞めてしまわないようにするにはどうしたらいいのか?

 

このように考えている人事担当者は、ぜひ一つの可能性として、100%優秀な人材の「全て」ではなく、得意なことも苦手なこともある人材がもつ「少しだけ」の要素やスキルに注目し、自社の求める戦力の一部と照らし合わせてみる、といったやり方にも耳を傾けてみてはどうだろうか。
むろん、社員を外へ送り出すということに伴うのは、決して制度や方針だけの変更ではなく、会社の経営陣や人事担当者自身に社員の忠誠や可能性を思い切って信じる勇気が必要となってくるのかもしれない。

Posted by on 2017年3月7日 | No Comments »

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